MOPはメタクラス上に構築されます。今回はそのクラスそのものを使って総称関数を使ってみます*1。
MOP ACのこれまでの記事を読まれた方なら既にご存知かと思いますが、 まずはメタクラスとはのおさらいです。MOPをMOP足らしめる大きな存在の一つとしてメタクラスがあります。例えばJavaであれば全てのクラスはjava.lang.Classのサブクラスになるといったように、CLOSでも大元のクラスがあります。CLならばstandard-class、Gauche及びSagittarius*2ならば<class>がデフォルトでクラスのメタクラスになります。ここでデフォルトでと言ったのは(CLOSベースの)MOPではこの階層を変更することができるからです。図で表すと以下のようになります。
+---------+ +-------+ +-----------------+
| <class> | <--------- | <top> | <<-+-- | builtin classes |
+----+----+ +-------+ | +-----------------+
^ |
^ | +----------+ +---------------+
| +-- | <object> | <<+-- | <user-class1> |
| +----+-----+ | +---------------+
| ^ |
| ^ | +---------------+
| | +-- | <user-class2> |
| +------------+ +---------------+
| |
+----+--------+ +---------+----------+
| <metaclass> | <---- | <meta-user-class1> |
+-------------+ +--------------------+
ASCII記号の関係上^及び<をインスタンス作成時に使用されるクラス、縦に並んだ^及び<<を継承関係として使っています。この図では<class>は独立した位置にありますが、実際のCLOSでは<object>のサブクラスになっています。つまり、CLOSのMOPにおいてはメタクラスも単なるオブジェクトに過ぎないということです。しかし、ここでは図を簡略にするため独立したものとして描いています。CLOSではこのメタクラスのサブクラスを使ってオブジェクト構築の振る舞いをユーザがコントロールできるようにしています*3*4。
ではこれが「明日使える総称関数」とどう関係してくるのでしょうか?ここでは実際に使われている例を見ながらその便利さを体感していきます。拙作Sagittarius Schemeでは最近(binary data)というライブラリが追加されました*5。このライブラリではメタクラスを使用したバイナリデータの読み書きとCLOSでの抽象化を行っています。
実際のコードはユーザの負担を減らすためにマクロでコードの自動生成をしていますが、肝になる部分は以下です。ここではユーザが
<;sample>という複合データクラスを:parent-metaclassキーワード引数に<sample-meta-parent>を指定したとします。*1*6;; This meta class will be generated automatically
(define-class <sample-meta> (<sample-meta-parent>) ())
;; main class
;; suppose user didn't specify the parent class
(define-class <sample> ()
((a :init-keyword :a :init-value #f))
:metaclass <sample-meta>)
;; binary reader
(define-method sample-read ((t <sample-meta>) in . ignore)
(let ((o (make t)) ;; !!! POINT !!!
;; read structured binary data and set it to the slot(s)
o))
sample-readはdefine-composite-data-defineマクロに渡されたreaderパラメタです。実際にはマクロによって暗黙的に定義されるので、<sample-meta>はユーザに見えることはありません。sample-readがこのように定義されてうれしい理由はなんでしょうか?一つの答えとして以下のように書くことができます。(sample-read <sample> binary-input-port) ;; => instance of <sample>コードの中でPOINTと書かれている部分がまさに肝です。CLOSではオブジェクトの構築はMOPを使っていると書きましたが、
makeも例に漏れず総称関数を<class>で特殊化したものです。つまり、<class>を継承したクラスを渡してやればそのインスタンスを作ることができます。また、総称関数の引数型に指定すればそのクラスで特殊化することが可能です。このライブラリの例では、バイナリという低レベルの操作をメタクラスによる総称関数のメソッドディスパッチでCLOSのインスタンスにマッピングするため、データの抽象度及びコードの可読性が格段にあがります*7。
今回紹介した例はCLやGaucheと他のCLOSベースのMOPでも応用可能です。贔屓の処理系で実際に動かしてみて理解を深めてみてはいかがでしょうか?
*1この記事が書かれた経緯。
*2Tiny CLOSベースなら恐らくどの処理系でも
*3参考例:Metaobjectでオブジェクト指向プログラミング
*4参考例:コンポジションに便利なpropagatedスロット
*5記事のサンプルコードと現在の実装では仕様が違うので注意
*6大したものじゃないって言ったじゃないですかw
*7体感には個人差があります。単なる宣伝です。
*2Tiny CLOSベースなら恐らくどの処理系でも
*3参考例:Metaobjectでオブジェクト指向プログラミング
*4参考例:コンポジションに便利なpropagatedスロット
*5記事のサンプルコードと現在の実装では仕様が違うので注意
*6大したものじゃないって言ったじゃないですかw
*7体感には個人差があります。単なる宣伝です。
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