Unlikely my (own) rule, this article is in Japanese (if you want it in English, please comment so).
世の中syntax-caseの解説なんて(たぶん)山ほどあるだろうけど、もう一つGoogleの検索結果を汚してやろうという話。
この記事のsyntax-rulesは使えるけど、syntax-caseとwith-syntaxを絡めて使えないという方をターゲットとしてます。マサカリ大歓迎ですw
【syntax-caseって】
まずは、簡単にsyntax-rulesとsyntax-caseの違いを見てみよう。
(import (rnrs))
(define-syntax print-rule
(syntax-rules ()
((_ o o* ...)
(begin (display o) (print-rule o* ...)))
((_ o)
(begin (display o) (print-rule)))
((_) (newline))))
(define-syntax print-stx
(lambda (x)
(syntax-case x ()
((_ o o* ...)
#'(begin (display o) (print-stx o* ...)))
((_ o)
#'(begin (display o) (print-stx)))
((_)
#'(newline)))))
どちらのマクロも同じことをします。これだけ見れば、違いは以下ぐらい:
- syntax-rulesがsyntax-caseになった
- lambdaで囲まれて、syntax-caseの引数(と呼ぶのもおかしいが)にlambdaの引数が渡った
- テンプレート部分がsyntax (#')で囲まれた
はい、この程度のものを書くならsyntax-rulesだけで十分です。じゃあ、syntax-caseを使うと何が嬉しいのか見ていきましょう。
【低レベルな操作】
何を持って低レベルとするのかはさておき、ここでは与えられて式の内容を操作することを低レベルと呼びます。syntax-rulesでは式の変形はできても、中身を操作することはできません。たとえば以下のようなコードは、syntax-rulesでは実現不可能です。
(define-syntax define-foo-prefix
(lambda (x)
(define (add-prefix name)
(string->symbol
(string-append "foo-" (symbol->string (syntax->datum name)))))
(syntax-case x ()
((k name expr)
;; need datum->syntax to compliant R6RS
(with-syntax ((prefiexed (datum->syntax #'k (add-prefix #'name))))
#'(define prefiexed expr))))))
(define-foo-prefix boo 1)
foo-boo ;; -> 1
さて、ここでwith-syntaxが出てきました。こいつが何をしているのかの説明がこの記事のメインなのでここで解説です。
構文的なものはR6RSでも見てもらえばいいとして、何をしているのか。名前が示すとおり、with-syntaxは新たに構文オブジェクトの束縛を作ります。 ここでは、
prefixedがそれにあたります。なぜこんなことが必要かといえば、syntax-caseのテンプレートは構文オブジェクトを返す必要があるからです。そして、
syntax (#')構文内では構文オブジェクトの束縛のみが参照可能ということも大きな要因です。上記のような、
低レベルな操作を
健全なマクロで行うためにあるといっても問題ないでしょう。
また、with-syntaxで作られた構文オブジェクトが保持する情報も重要になってきます。R6RSではテンプレート部分にどこにも定義されていない名前が出てくると、それはユニークな名前に変更されます。define-valuesなどの定義で、dummyとか使われているあれです。しかし、with-syntaxで束縛された構文は束縛された名前がそのまま使えます。
いまいちイメージがつかめない方のために、R5RSとCommon Lispのマクロの議論でよく引き合いに出されるaifをwith-syntaxを使って書いて見ましょう。こんな感じの定義になると思います。
(define-syntax aif
(lambda (x)
(syntax-case x ()
((_ pred then)
#'(aif pred then #f))
((k pred then else)
;; ditto
(with-syntax ((it (datum->syntax #'k 'it)))
#'(let ((it pred))
(if it then else)))))))
(aif (memq 'a '(b c a e f)) it 'boo) ;; -> (a e f)
aifはpred部分の評価結果を変数itに
暗黙的に束縛します。なので、マクロユーザからはその定義は見えず、いきなり現れたように見えます。Schemer的にはいまいち気持ち悪い気もしますが、あれば便利な機能です。
ここで使われているwith-syntaxが何をしているかといえば、シンボルitを構文オブジェクトに変換してテンプレート内で参照可能にしています。このitはリネームされないため、あたかも突如現れたかのように使うことができるのです。
【それ、quasisyntaxでもできるよ?】
はい、できます。with-syntaxとquasisyntaxはほぼ同等の力を持っていると思っていいです。なので、上記の例は以下のように書き換えることが可能です。
(define-syntax define-foo-prefix
(lambda (x)
(define (add-prefix name)
;; ditto
(datum->syntax name
(string->symbol
(string-append "foo-" (symbol->string (syntax->datum name))))))
(syntax-case x ()
((_ name expr)
#`(define #,(add-prefix #'name) expr)))))
(define-syntax aif-quasi
(lambda (x)
(syntax-case x ()
((_ pred then)
#'(aif pred then #f))
((k pred then else)
;; ditto
(let ((it (datum->syntax #'k 'it)))
#`(let ((#,it pred))
(if #,it then else)))))))
どちらの方がいいかはユーザの感性に寄るとは思いますが、個人的にはwith-syntaxを使った方が綺麗かなぁと思います。quasisyntaxはCommon Lispのマクロを連想させるという理由だけなのですが・・・。ただ、あまりに多くの構文を導入する必要があると無駄に長くなるという弊害もあるので、ケースバイケースで使い分けるのがいいでしょう。
追記:
Twitterで早速突っ込みが入ったのでdatum->syntaxで明示的に構文オブジェクトに変換するようにコードを修正。SagittariusとYpsilonはこの辺多少チェックがゆるい。
それに伴って多少文言の修正。with-syntaxは構文オブジェクトを束縛する等々。