Let's start Scheme

2013-08-28

TLSライブラリのバグ

WebSocketをTLSで使うためにSNIがサポートされてないといけないという話からバグを発見。元々は、wssでアクセスするとフリーズするという話だったのだが、これSNIが問題ではなく単にバグを踏んでいただけだったという話。

問題はTLSのレコードが複数のハンドシェイクメッセージを持つことが可能であることに起因する。現状の実装では1レコード1メッセージを期待していて、複数のメッセージが乗っていた場合2レコード目以降を捨ててしまうというバグである。(単にRFCの読みが甘かったという話でもある。)

これ結構大きめな問題で、設計からやり直しかねぇと思いながら15分くらい考えたらなんとなく隙間を縫っていけそうな解決案が思い浮んだのでメモ。現状レコードで運ばれてきたメッセージはとりあえず一度に全部取得し、その後先頭バイトを見てメッセージの振り分けをしている。ここで、アプリケーションメッセージ以外のメッセージは取得した内容をバイナリポートに変換して扱いやすくしている。

問題になるのは、変換したポートが空になるまで読んでいないことなのだ。1メッセージ読んだ後に1バイト先を見てやりEOFでないならセッションオブジェクトにでも保存しておけば次に読むのはメッセージであるということが分かるのでソケットにアクセスしにいって無限に待つということもなくなるのではないか、という案。レコードを読む部分の処理とセッションオブジェクトの変更のみで残りの部分は特に問題なくいける気がする。

とりあえず、明日試してみることにする。 しかし、原因を追究するためにRFCを読み直したり、パケットログを取ったりといろいろやったが、ほぼ空回りというのが自分らしいというか・・・

2013-08-27

SchemeでJSON-RPC

SchemeでRAM over Httpだとさすがに誰得すぎるというのがあったので、まだ需要がありそうなJSON-RPCにw (どちらも仕事で使っているという点は一緒)

最近自社プロダクトでJSON-RPCを使っている外部インターフェースがあることに気づいた。ついでにその機能をテストする必要も出てきて、毎回SoapUIで作られたテスト用のスクリプトを数個走らせるのはたるいので、えいやっと作った。最新のHEADに入ってる。

JSON-RPC自体は仕様がネットで公開されているので、それを参照してもらうとして、実際にSagittarius上で使うと以下のような感じになる。
(import (rpc json) (rpc transport http))

(define request (make-json-request 'someMethod :params #((p1 . 1) (p2 . 2)))

(let-values (((status header response)
       (rpc-http-request "http://somewhere.com/jsonrpc-service" request)))
  (json-response-result response))
たったこれだけ!

JSON-RPC自体は非常に簡単な仕様なので、JSONを読み書きできるライブラリがあれば実装可能。 HTTPはSRFI-106で頑張ればいけるので、その気になればそこそこポータブルな実装でもいけるかもしれない(やる気はない)。

実装した際に一応気にしたのは、トランスポートとメッセージは可能な限り分離するということ。これは(今のところ予定はないが)他のRPC(Message PackとかXML-RPCとか)をサポートする際に自分が楽をしたいため。ただ、現状どちらの実装も一個しかないので上手いこと分離できてるかは多少不安。ついでに、JSONの読み書きに使っているChicken Schemeからの移植JSONライブラリはベクタをマップとして扱うので多少使い勝手が悪い部分もある(主にレスポンスデータの探索等)。まぁmatchが使えたり、メモリ気にしなくていいなら手間がかかる程度ではあるが・・・

実際のコードは実に合計で500行以下くらいなので、こういうのがサクッと作れる位には下地になるライブラリが揃っているということになる。多分に偏りがあるというか、一転集中型で揃っているだけだが・・・

2013-08-23

Sagittarius 0.4.8 リリース

Sagittarius Scheme 0.4.8がリリースされました。今回のリリースはメンテナンスリリースです。

修正された不具合
  • bytevector-u8-set!が負のインデックスを受付けかつデータを破壊する不具合が修正されました
  • マクロ展開でlambdaが未束縛エラーになる不具合が修正されました
  • cond-expandがネストした条件を処理できない不具合が修正されました
  • bitwise-ior、bitwise-xor及びbitwise-andが0引数を受け付けない不具合が修正されました
  • write-emv-tlvが長さバイトを正しくエンコードしない不具合が修正されました
改善点
  • bitwise-ior、bitwise-xor、bitwise-and、fxior、fxxor及びfxandのパフォーマンスが改善されました
新たに追加された機能
  • bytevector-split-at*及びbytevector-splicesが(util bytevector)に追加されました
  • SRFI-106がサポートされました
  • CMACライブラリ(rfc cmac)が追加されました
  • c-variableマクロが(sagittarius ffi)に追加されました
  • QNX (BlackBerry 10)環境でのビルドがサポートされました(x86のみ)
  • socket-sendto及びsocket-recvfromが(sagittarius socket)に追加されました
非互換な変更
  • let-syntax及びletrec-syntaxの既定の振る舞いがR6RSのものになりました。R5RS/R7RSの振る舞いにするには#!r7rsをつける必要があります。

2013-08-17

速度改善

Pure SchemeでCRC32のベンチマークを取った方がいて、ありがたいことにSagittariusも結果に入っていた。


問題は結果のほうである。後ろから数えた方が早い位置にいる。Sagittariusは最速を目指しているわけではないのだが、(明示してないけど)高速であることも売りにしている。幸いにもソースは公開されていらしたのでプロファイルを取って速度改善に望むことにした。

Fixnumは30ビット幅しかないので(32ビット環境)CRCテーブルの要素ほぼ全てはBignumになると思っていい。これは避けようがないので放置。ざっとソースを見ると(当たり前だが)ビット演算が多用されているので実装を眺める。Fixnum-Bignumの組み合わせの場合にFixnumをBignumに変換してBignum同士で演算するようにしていたので、とりあえずこいつのメモリ割り当てをやめるようにする(ちょこっと改善された)。

次にプロファイルを取る。するとbitwise-xorやたら遅い。実装もまぁ、そりゃ遅いわという感じだったので、ゴリゴリ書き直し。(15%くらい改善)。次いで気になったのでbytevector-u8-refがやたらサンプリングされていた。こんなの単なる配列アクセスだからどれだけ呼ばれてもそんなにあるわけ無いだろうと思ったら実装があほなことをしていたので直す(微々たる改善)。

とりあえず、この段階で既存のものと比較してみた。結果は以下。
$ sash crc.scm

;;  (crc32 data)
;;  121.992214 real    124.3640 user    6.130000 sys

$ ./build/sash.exe crc.scm

;;  (crc32 data)
;;  100.720778 real    101.5090 user    3.6040000915527344 sys
うむむ、まだ遅い。bitwise-xorが処理時間の半分を占めているのでそこの改善がほぼダイレクトに効くのだが、どうやら効かせ方が足りないらしい。

2013-08-01

Boehm GCとQNXとBB10と

いろいろ動くようになってきたので多少のメモを含めて。

BB10(Blackberry 10)上でSagittariusを動かせないだろうかというのはそれこそ発売当初くらいから考えていたりする(2月か?)。BB10はQNXをベース(というかOSはQNX)にしたデバイスなのでPOSIX準拠(なはず)。POSIXをサポートしてるんだし、いけるだろう程度にしか考えてなかったのだが、Boehm GCが鬼門であった。

Twitterでも呟いたのだが、Boehm GCの環境依存コードはよく言えば歴史を感じさせる継ぎ足しっぷり、悪く言えば全くもって嫌気がするレベルのコードである。QNX自体は結構歴史あるUNIX系OS(らしい)ので当然サポートされてるだろうなぁ、なんてあまっちょろいことを考えていたのだが、世の中そううまくいくわけはなかった。がっつりパッチを書きました。幸いだったのは、FreeBSD依存のコードとか、OpenBSD依存のコードが結構流用できたので最低限サポートしなければならない部分だけ書けばよかった点かな。最新のHEADはQNX用のBoehm GCのパッチが入ってたりする。できに自身はないので、本家に取り込んでもらおうということは考えていない。

元々はSagittariusのC APIを使って実装しようと思ったんだけど、RIMが提供するIDEでの設定が分からなかったのでbarファイルにsashごと全部放り込んでリモートREPLを立ち上げるというかなり強引な手を使って実現してたりする。ソケット通信なのでセキュリティ等々をもう少し考えないとまずいのだが(俺々証明書作ってTLSで通信するか?)、まぁそれはもう少し後にする。GUIのデザインは正直苦手なのと今一Widgetの融通が利かないのとで多少異常に満足のいかないものになっているのも愛嬌だろう・・・

とりあえず、実装詳細的なもの。
  • sashプロセスが立ち上がってもREPLサーバは立ち上がっていない
    • 回避するためにサーバが立ち上がったらマークファイル作るようにした
  • (exit)を実行するとプロセスごと死ぬ問題
    • 死んだことを検地して再起動を促すように
  • Qt側のソケットとプロセスの状態をQtのシグナル/スロットで監視
    • これ、便利なんだけど、スロット内で他のシグナルを起動するようなことすると意味不明のバグになる
      • 既に悩んだ
      • しかも、どれがシグナルを送るのか今一わからなかったりするしw
ふと思ったのだが、この手法(リモートREPL)で行けば他のモバイルで動かすのも簡単にいけるのではないかと妄想。

以下はTODO
  • 起動ポートを設定可能にしたい
    • 既に準備はしてある
  • 実行履歴があると便利だと思う
    • 外部に出す?
  • 実機で動かしてみたい
  • Blackberry Worldに登録
仕事で山ほどBB7(一つ前のモデル郡の総称)の実機を使ってるのに、BB10の実機はない現実。ここではまだ売ってないので買うという選択肢もないという(まだ北米だけか?もう欧州でも売ってる?買うつもりはないんだけどw)。ストレステストみたいなことはしてないので、Boehm GCがまともに動いてるのかは微妙なんだけど(多分動いてると思う)、気になってるのはシミュレータと実機ではCPUが違うこと。実機はARMなんだよね。CPU依存の部分は特に変更なかったと思うから大丈夫だとは思うけど・・・


ということで、だれかBB10ください(違